日本に留学している卒業予定の外国人を雇いたいという企業も多いと思います。
留学生が卒業後に日本で働く場合、「留学」という在留資格から「技術・人文知識・国際業務」や「経営・管理」といった就労が認められた在留資格に変更する必要があります。(在留資格に関しましては『在留資格とは』で詳しくご説明しています。)
在留資格の変更には、いろいろな注意点があります。
新卒の外国人を雇用する場合の手続や注意点をわかりやすくご説明したいと思います。
(新卒留学生を含めた外国人全般の雇用に関しては『外国人の雇用』もあわせてご参照下さい。)
外国人留学生の就職状況
日本には毎年たくさんの外国人留学生が来ていますが、卒業後に日本の企業に勤める外国人留学生はどれくらいいるのでしょうか。
法務省入国管理局の「平成28年における留学生の日本企業等への就職状況について」によると、平成28年において「 留学」 「特定活動(継続就職活動中の者,就職内定者等)」の在留資格を有する外国人が日本企業等への就職を目的として行った在留資格変更許可申請数は21,898人(許可数19,435人)とされています。
平成27年度の処分数である17,088人4,810人(28.1%)増加しています。
許可数をみても15,657人から3,778人(24.1%)増加しています。
平成28年度に就労ビザに在留資格の変更が許可された19,435人の内、技術者やホワイトカラーとして働く「技術・人文知識・国際業務」への変更が17,353人と89.3%を占めています。
就職先の業種
業種別で許可人数をみてみると、平成28年では製造業が全体の15.7%(3,968人)、非製造業が84.3%(21,263人)となっています。
特に多いのが貿易関連で20.6%(5,202人)で次いでコンピュータ関連の9.4%(2,374人)となっています。
職務内容
職務内容では、翻訳・通訳が24.0%(7,515人)と全体の約1/4を占めています。
この数字は複数回答しているものなので、通訳もしてマーケティングなどの営業や海外現地向け広報宣伝の仕事をしているという場合もあります。
月額報酬
絶対金額で見てみると平成28年のデータでは月額報酬20万円以上25万円未満が49.2%(9,555人)と約半数を占めています。
外国人を雇用する際の給与の設定には気をつけなければいけない点があります。
外国人を雇用する場合、給与の絶対額よりも「同じ条件の日本人と比べて同額又はそれ以上の報酬」であるかが重要になります。
いくら金額が高くても、同じ条件で働く日本人よりも低く設定されている場合は許可が出ませんので注意して下さい。
就職先企業の規模
平成28年度の外国人を雇用する企業の規模をみると50人未満の会社が約40%(7,844人)となっています。
従業員数100名以上の会社が約半数あり、中小企業から大企業まで幅広く外国人を採用していることがわかります。
外国人留学生の新卒採用する時の確認事項
外国人留学生を新卒で採用する場合、いくつか注意しなければいけない点があります。
知らずに採用を決めて、卒業後にあなたの会社で働くことができないということになる可能性があります。
それではどのような点に注意しなければいけないのかを見てみましょう。
在留カードの確認
雇用する予定の留学生が適法に日本に在留していることを確認するために「在留カード」を確認しましょう。
在留カードには、その外国人が日本で活動できる内容や在留できる期限などが記されています。
(在留カードに関しましては『在留カードとは』で詳しくご説明していますのでご参照下さい。)
在留期限が切れている不法滞在者や、卒業予定の留学生と偽っている日本で就労できな在留資格の外国人を雇ってしまうと、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金の不法就労助長罪に問われる可能性もありますので、充分注意をして下さい。
(不法就労助長罪に関しましては『不法就労助長罪とは』で詳しくご説明していますのでご参照下さい。)
大学・専門学校での専攻科目の確認
外国人留学生が卒業後に日本の企業で働く場合、一般的には「留学」という在留資格から「技術・人文知識・国際業務」という在留資格に変更をしなければいけません。
その変更の審査で重要になるのが、「大学・専門学校での専攻科目と職務内容の関連性」です。
例えば、システムエンジニアとして採用したい場合は、情報処理関連の単位を取得しているなど、職務内容と関連している単位を取得している必要があります。
デザイナーの専門学校を卒業して貿易実務の仕事に就いたり、経済学を専攻して医療研究開発の仕事に就くような場合は在留資格の許可が出ません。
日本人と同額以上の月額報酬
「外国人だから日本人より安く雇えますよね」と言われる場合がありますが、それは間違いです。
外国人を雇う場合、日本人と同額以上の報酬にする必要があります。
外国人が日本で働くことが許可されるのは、安い労働力ではなく、外国人だからこそできる仕事や専門知識があるからこそ出来る仕事をしてもらう場合です。
専門知識を活かすという意味で、先程ご説明しました専攻科目と職務内容の関連性が重要視されています。
「技術・人文知識・国際業務ビザ」の注意点に関しましては『技術・人文知識・国際業務ビザとは』のページでも詳しくご説明しておりますので、ご参照下さい。
在留資格の変更手続
留学生が卒業後に働き始めるには「留学」という在留資格から「技術・人文知識・国際業務ビザ」などの就労ビザに変更をしなければいけません。
「誰」が「いつ」変更手続をするのかを見てみましょう。
在留資格変更申請者
在留資格の変更申請をが出来るのは以下のように定められています。
1 申請人本人(日本での滞在を希望している外国人本人)
2 代理人 申請人本人の法定代理人
3 取次者
(1)地方入国管理局長から申請取次の承認を受けている次の者で,申請人から依頼を受けたもの
ア 申請人が経営している機関又は雇用されている機関の職員
イ 申請人が研修又は教育を受けている機関の職員
ウ 外国人が行う技能,技術又は知識を修得する活動の監理を行う団体
エ 外国人の円滑な受入れを図ることを目的とする公益法人の職員
(2)地方入国管理局長に届け出た弁護士又は行政書士で,申請人から依頼を受けたもの
(3)申請人本人が16歳未満の場合又は疾病(注)その他の事由により自ら出頭することができない場合には,その親族又は同居者若しくはこれに準ずる者で地方入国管理局長が適当と認めるもの
2の法定代理人というのは、申請者が16歳未満の親権者ですので、大学や専門学校を卒業した留学生の在留資格変更には法定代理人の申請はできません。
3地方入国管理局長から申請取次の承認を受けている必要がありますので、通常は雇用する会社の職員は申請はできません。
一般的には、申請者本人がおこなうか、地方入国管理局長から申請取次の承認を受けている行政書士等が入国管理局に申請します。
在留資格変更の時期
4月1日から採用する場合、4月1日までに「留学」から「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザへの変更をすませておく必要があります。
審査は2か月程度かかる場合もありますので、1月末くらいまでには入国管理局は変更の申請をされることをお勧めします。
特に審査で問題が無かった場合、3月に入国管理局へ卒業証書を提示した後に在留資格の変更となります。
入社日までに在留資格の変更が間に合わなかった場合は、入社式から働くことができませんので注意しましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
外国人留学生を新卒で雇う場合の注意点をご理解いただけたのではないかと思います。
専攻科目と職務内容の関連性がなく不許可になったり、在留資格変更の申請が遅くなって入社に間に合わなくなったりすることがないように注意が必要です。
出来るだけ早めに時間に余裕をもって在留資格の変更手続をおこなうことが重要です。