人手不足で外国人を雇うのも検討したいという経営者の方も多いのではないでしょうか。
日本では移民政策をとっていないため、原則として単純労働での外国人の就労は認められていません。
しかし深刻な人材不足に対応するため2019年4月から新たな在留資格が新設され、建設業での単純労働が認められる予定です。
建設業で外国人を雇用する際に注意するべき点などをわかりやすくご説明したいと思います。
(建設業で特定技能の外国人を雇う場合は『【特定技能】建設業の外国人雇用』で詳しくご説明していますので、ご参照下さい)
建設業で外国人を雇用する上での注意点
外国人を雇用する際に、まずは「在留資格」に関して知っておきましょう。
在留資格の確認
日本に住んでいる外国人は、日本国内で出来る活動が決められています。
日本に在留することができる資格を「在留資格」と言います。(在留資格に関しましては『在留資格とは』で詳しくご説明しています。)
例えば「留学」という活動をすることで日本に在留することを認められている場合、原則として就労することはできません。
(※但し、資格外活動の許可をとることで週28時間までの就労は可能になります。(詳しくは『「資格外活動」とは|留学生アルバイトを雇う時の注意点』をご参照下さい。))
このように、在留資格には「就労できる在留資格」と「就労できない在留資格」があります。
どのような在留資格かは「在留カード」に明記されています。(在留カードに関しましては『在留カードとは』で詳しくご説明しています。)
雇用する外国人が就労できる在留資格をもっているかを在留カードで必ず確認しましょう。
在留カードの確認方法は『「不法就労」の外国人を雇わないための注意点』で詳しくご説明していますのでご参照下さい。
不法就労者を雇った場合の罪
不法就労で働く外国人だけではなく、不法就労者を雇った雇用者も「不法就労助長罪」という罪になる場合があります。
罰則は「三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」とされています。
外国人を雇用しようとする際に、その外国人が不法就労者であることを知らなかったとしても、在留カードを確認していない等の過失がある場合には処罰を免れませんので、注意して下さい。
詳しくは『知らなかったではすまない!「不法就労助長罪」』でご説明していますのでご参照下さい。
建設現場で雇うことができる外国人
それでは、どのような在留資格を持つ外国人であれば建設業で雇用できるのかをご説明したいと思います。
特定技能
「特定技能」という在留資格は、2019年4月に新設される予定の在留資格です。
建設現場などでの単純労働が認められ、最長5年間の就労が認められる予定です。
建設業としては2025年までに30万人の受入を計画されています。
(建設業で特定技能の外国人を雇う場合は『【特定技能】建設業の外国人雇用』で詳しくご説明していますので、ご参照下さい)
身分又は地位に基づく在留資格
身分又は地位に基づく在留資格とは4つの種類の在留資格の総称です。
この4種類の在留資格には活動の制限がありませんので、建設業の単純労働に就くことも可能です。
永住者
「永住者」とは、法務大臣が永住を認めた人で、その生涯を日本に生活の本拠を置いて過ごすと認定された外国人です。
「永住者」の在留資格は在留期限が無期限となり、日本人と同様にどのような職業にでも就く事ができます。
日本人の配偶者等
「日本人の配偶者等」には以下の3つのケースがあります。
1.日本人の配偶者
日本人と婚姻している人です。
原則として内縁の妻や夫などは該当しません。
2.日本人の特別養子
「民法第817条の2の規定による特別養子」です。
特別養子の場合、実父母との親族関係が終了し、戸籍の記載に「養子」や「養父母」といった記載が用いられません。
一般的な養子縁組では「日本人の配偶者等」の在留資格は認められません。
3.日本人の子として出生したもの
実子以外にも認知された非嫡出子も含まれます。
永住者の配偶者等
「永住者の配偶者等」とは、「永住者」の配偶者、「特別永住者」の配偶者、「永住者」の子が該当します。
定住者
「定住者」とは、法務大臣が特別な理由を考慮して一定の在留期間の居住を認める者です。
定住者にはいろいろなケースがありますが、難民、日系3世などが該当します。
「定住者」の在留資格は就労に制限がありませんので、建設現場の単純労働などに就くことが可能です。
資格外活動
「留学」の在留資格の留学生や「家族滞在」の在留資格の外国人は原則として就労することはできません。
しかし 「資格外活動許可」を取得する事によって1週間28時間以内の就労が可能になります。
資格外活動では単純労働をすることができますので、建設現場の単純労働などに就くことが可能です。
「資格外活動」に関しましては、『資格外活動とは』で詳しくご説明していますので、ご参照下さい。
技能
外国に特有の建築現場で外国人を雇う場合、「技能」という在留資格をもっている外国人を雇うことができる可能性があります。
外国に特有の建築とは、例えば、ゴシック、ロマネスク、バロック方式又は中国式、韓国式等の建築といった日本にない建築です。
外国に特有の建築に関する技能を要する業務に従事するために雇うことが認められるので、外国に特有の建築現場であっても技能ビザでの単純労働は認められていません。
「技能」に関しましては、『技能ビザとは』で詳しくご説明していますので、ご参照下さい。
技能実習生
技能実習制度は『我が国で開発され培われた技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、その開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的とする制度』と定義されています。
つまり、開発途上国等の人に日本の技術や知識を習得して母国に帰ってから役立ててもらう趣旨の制度です。
ですから「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」と明記されています。
これは日本の人手不足を補うために単純労働をする労働力として技能実習制度を利用してはいけないという意味です。
「技能実習生」に関しましては、『外国人技能実習制度とは』で詳しくご説明していますので、ご参照下さい。
建設業で外国人を雇用した場合の届け出
建設業で外国人を雇用した場合に届出が必要な書類があります。
届出を怠ると罰金が科せられるものもありますので、必ず必要な届出をおこなうようにしましょう。
外国人雇用状況の届出
「外国人雇用状況の届出」は、外国人の雇入れの場合だけではなく離職の際にも必要になります。
この届出は雇用対策法という法律で、すべての事業主に義務付けられています。
オンライン又はハローワークを通じて、氏名、在留資格、在留期間、その他厚生労働省令で定める事項を厚生労働大臣に届出をおこないます。
この届出を怠ると、30万円以下の罰金が科される可能性があります。
「外国人雇用状況の届出」に関しましては、『外国人雇用状況の届出とは』で詳しくご説明していますので、ご参照下さい。
外国人建設就労者建設現場入場届出書
「外国人建設就労者建設現場入場届出書」とは、技能実習生だった外国人を雇用する場合に下請負企業が元請負に提出するものです。
この書類は建設分野の技能実習を修了して引き続き日本に在留又は帰国後に再入国した外国人建設就労者が現場に入場する場合に必要な書類です。
先程ご説明した定住者や現在技能実習生である外国人が現場に入場する場合には提出する必要はありません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
震災復興に加えて、2020 年オリンピック・パラリンピック東京大会の関連施設整備等によって建設需要は高まる一方です。
そのたま、国内での人材確保が急務となり、即戦力となり得る外国人材の活用促進を図ることが必要となってきました。
まだ確定していない部分が多い「特定技能」ですが、単純労働が認められるという意味では人材不足で困っている建設現場で外国人が即戦力として期待できると思います。
雇用環境の整備や言葉・文化・風習の違いなどの問題をきちんと解決して外国人が働きやすい環境を作ることが重要になると思います。