外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会(EPA介護福祉士候補者等の更なる活躍促進策)

[記事公開日]2017/01/29

2014年10月30日から2016年10月4日までの13回にわたって「外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会」が開催されました。

このページでは第8回から第13回の検討会で議論された「EPA介護福祉士候補者等の更なる活躍促進策」について、どのような論点で、どのように検討が進められたのかを判りやすくご説明したいと思います。

 

はじめに

経済連携協定(EPA)は、二国間の経済連携の強化の観点から行われるもので、両国間の友好や協力の促進を意図して締結されたものです。

日本では平成20年度よりEPAに基づき、特例的に外国人介護労働者の 受入れを開始して、現在は3か国(インドネシア、ベトナム、フィリピン)から介護福祉士候補者を受け入れています。

近年、その数は増加傾向にあり、平成27年度には累積で 2,106 名となっています。

EPA介護福祉士候補者は、入国して各受入れ施設において就労しながら介護の経験を積みます。

3年間で介護福祉士国家試験の受験資格を得て、4年目に介護福祉士国家試験を受験する流れになります。

EPA介護福祉士候補者の合格率は、平成 23 年度には 37.9%でしたが平成 26 年度には 44.8%へと上昇しています。

既に介護福祉士国家試験を受験した平成 23 年度 までに入国した者622名のうち、累計で317名が合格しています。

「日本再興戦略」 (改訂 2015)(平成 27 年6月 30 日閣議決定)において「経済連携協定に基づきインドネシア、ベトナム及びフィリピンから受け入れている外国人介護福祉士候補者について、その更なる活躍を促進する ための具体的方策について検討を開始し、本年度中に結論を得る」とされています。

こうした中で、平成28年1月より検討会が再開され、EPA介護福祉士候補者等の更なる活躍促進策について検討が行われました。

技能実習制度への介護職種の追加と外国人留学生が介護福祉士資格を取得した場合の在留資格の付与等 についての検討は『在留資格「介護」と技能実習の職種「介護職」』をご参照下さい。

 

EPA介護福祉士候補者等の更なる活躍促進策に関する検討事項について

検討会で検討すべき事項は以下のように、整理されています。

(1)EPA介護福祉士候補者について

  • 受入れ対象施設の範囲の拡大
  • 受入れ施設当たりの受入れ人数の下限の見直し

 

(2)EPA介護福祉士について

  • 就労範囲の拡大
  • EPA介護福祉士の家族の資格外活動の緩和

 

EPA介護福祉士候補者について

EPA介護福祉士候補者については、「受入施設の範囲の拡大」と「受入人数の下限の見直し」に関して検討されました。

 

(1)EPA介護福祉士候補者の受入れ対象施設の範囲の拡大について

EPA介護福祉士候補者の受入れ対象施設の範囲の拡大についてについては、以下のような検討がされました。

 

ア 現状

EPA介護福祉士候補者は、限られた滞在期間の中で介護福祉士国家試験への合格を目指す必要があることから、受入れ施設には以下の条件が求められています。

  • 介護福祉士国家試験の受験資格要件において、「介護」の実務経験と して認められる業務に従事できること
  • 介護福祉士資格取得に向けた研修体制が確保されていること
  • 適切な労務管理体制が確保されていること

あわせて、受入れ施設においては、適切な研修体制の確保等の観点から、以下の要件が検討されました。

  • 介護福祉士養成施設の実習施設と同等の体制が整備されていること
  • 常勤介護職員の4割以上が介護福祉士の資格を有すること

また、EPA介護福祉士候補者の受入れが、介護分野において外国人材を受け入れる初めての取組であったことなども踏まえて、現在、受入れ対象施設は、インドネシア、フィリピン、ベトナムについて共通で、以下の範囲とされています。

  • 定員 30 名以上の指針別表第一に掲げる介護施設(入所施設)
  • 上記施設と同一敷地内において、一体的に運営されている指針別表 第二に掲げる介護施設(通所介護等)

このため、入所施設ではない施設(特定施設等)や、当時少数であったいわゆる小規模な入所施設(地域密着型介護老人福祉施設等)、訪問系サ ービスを提供する事業所、主たるサービスが介護ではない施設(病院、診 療所等)などは、対象外とされています。

 

イ 具体的な対応の在り方

EPA介護福祉士候補者の受入れが始まった当初と比べ、介護サービスの提供体制は大きく変化しています。

EPA介護福祉士候補者について、合格後、介護の専門職として活躍していくために、様々な介護現場を経験することも必要であると考えられます。

特定施設入居者生活介護の指定を受けた事業所(外部サービス利用型を除く。)は、介護保険法に基づく指定を受けているものであり、指針別表 第一に掲げる介護施設と同様の介護サービスの提供体制が担保されていると考えられます。

定員 30 名以上の場合には、研修体制及び労務管理体制(以下「研修体制等」という)が確保できると考えられるため、 受入れ対象施設とすることが適当である。

定員 29 名以下の指針別表第一に掲げる介護施設及び指定地域密着型介護老人福祉施設については、定員 30 名以上の指針別表第一に掲げる介護施設(上記特定施設入居者生活介護の指定を受けた事業所を含む。)と同 一敷地内で一体的に運営されている場合には、研修体制等が確保できると考えられます。

そこで、以下の場合には、受入れ対象施設とすることが適当であるとされました。

  • 定員 30 名以上の指針別表第一に掲げる介護施設
  • 本体施設が定員 30 名以上の指針別表第一に掲げる介護施設等(サテライト型施設)
  • 特定施設入居者生活介護の指定を受けた事業所及び当該サテライト型施設と同一敷地内で一体的に運営されている指針別表第二に掲げる介護施設(通所介護等(定員 29 名以下の指針別表第一に掲げる介護施設及び指定地域密着型介護老人福祉施設を含む。))

受入れ対象施設の範囲を拡大するに当たっては、引き続き、国家試験合格率の一層の向上に向けた学習支援体制や適切な労務管理体制を確保することを前提とすることが必要であるとともに、これらの体制確保が 確実に履行されることが重要だとされました。

介護サービス提供体制の変化等を踏まえて、地域密着型介護老人福祉施設については、サテライト型施設や同一敷地内で一体的に運営されている場合に限定せず、単独での受入れを可能とすることについても、検討 していくべきであるとの意見がありました。

 

(2)EPA介護福祉士候補者受入れ人数の下限の見直しについて

EPA介護福祉士候補者受入れ人数の下限の見直しについてに関しては、以下のような検討が行われました。

 

ア 現状

EPA介護福祉士候補者の受入れは、候補者のメンタルヘルスケアの観点から、原則として各年1か国2名以上とされています。

しかし、運用上、以下の場合には、1名のみの受入れも可能とされています。

  1. 同国出身のEPA介護福祉士が就労している場合
  2. 前年度に同国から受け入れる候補者がいる場合、又は前々年度に受 け入れた候補者が引き続き就労している場合
  3. マッチング運用上の都合等により、2名以上の介護福祉士候補者が 確保できなかった場合

JICWELSの相談窓口に寄せられたメンタルヘルスに関する相談は、 平成 25 年度、平成 26 年度及び平成 27 年4月から 12 月までにおいて、全体の3%程度、それぞれ 10 件以下となっています。

そのうち、候補者本人からの相談内容は、「仕事上の人間関係によるストレス」「合格への不安」 等となっています。

 

イ 具体的な対応の在り方

EPA介護福祉士候補者の受入れは、二国間の経済の連携強化という目的で特例的に行われているものです。

人権擁護及び外交上の配慮という観点からも、メンタルヘルスを損なうことにより帰国を余儀なくされることがないようにすることが重要と考えられます。

したがって、全面的なEPA介護福祉士候補者の1名からの受入れは、 運用の柔軟化を図りつつも、実態を把握した上で、検討を進めるべきであるとされました。

いわゆるSNS等を活用して、EPA介護福祉士候補者間でのネットワークの形成が進んでいることや、受入れ施設での十分な対応等により、 メンタルヘルスケアは担保されていると考えられることなどから、原則1名からの受入れを可能としてはどうかとの意見もありました。

運用の柔軟化の具体的な在り方としては、今回の受入れ対象施設の範囲拡大に伴い、以下の考え方に沿って対応を図ることが適当であるとされました。

  • サテライト型施設(本体施設が病院又は診療所であるものを除く。) については、本体施設と密接な連携が確保されていると考えられるた め、本体施設又はサテライト型施設のいずれかにおいて、上記(ア現状の①又は②)の要件を満たす場合には、1名からの受入れを可能とする。
  • EPA介護福祉士候補者の受入れ対象施設と同一敷地内において、 一体的に運営されている指針別表第二に掲げる介護施設についても、 同様に、1名からの受入れを可能とする。

また、運用の柔軟化を図るに当たっては、受入れ施設において、サテラ イト型施設等にいる同国出身のEPA介護福祉士候補者と本体施設等にい るEPA介護福祉士候補者等が交流できる場を定期的に設けること及びその履行の確保が必要であるとされました。

 

EPA介護福祉士について

EPA介護福祉士については「就労範囲の拡大」と「EPA介護福祉士の家族の資格外活動の緩和」についての検討が行われました。

 

(1)EPA介護福祉士の就労範囲の拡大について

EPA介護福祉士の就労範囲の現状確認と範囲拡大についての検討がされました。

 

ア 現状

訪問系サービスについては、利用者と1対1で業務を行うことが基本であることから、利用者、EPA介護福祉士双方の人権擁護、適切な在留管理の担保が困難と考えられているので、EPA介護福祉士の就労範囲の対象外とされています。

また、医療機関については、医療法に規定される療養病床のみが対象とされています。

 

イ 具体的な対応の在り方

EPA介護福祉士については、以下の観点から、介護福祉士としての就労範囲に制限を設ける理由は乏しいと考えられる。

  • 日本人介護福祉士と同様に、専門的知識及び技術を有することが確認されていること
  • 就労の際には、日本人介護福祉士と同様に、その適性に沿った業務に配置されると考えられること

その際、専門職として多様な経験を積んでいき、スキルを高めていく観点からも、その就労範囲について活躍の場を広げていくことが適当であるとされました。

このため、EPA介護福祉士の就労範囲としては、「介護」の業務が関連制度において想定される範囲として、介護福祉士の国家試験の受験資格要件において「介護」の実務経験として認められる業務の範囲全般とすることが適当であると検討されました。

ただし、特に訪問系サービスを就労範囲に認めることについては、外国 人労働者の人権擁護等の観点から、なお、慎重に検討するべきであるとの意見もありました。

なお、EPA介護福祉士を従事させるに際し、受入れ施設において、業務に必要な日本語学習の支援を引き続き行うことやEPA介護福祉士の個々の専門性や経験を踏まえた適切な配置や労務管理を行うことが重要である、ともされました。

その際、特に訪問系サービスについては、EPA介護福祉士の受入れは、 二国間の経済の連携強化という目的で特例的に行われているものであり、 外交上の配慮という観点からも、EPA介護福祉士の人権擁護が確実に図られる必要があります。

このため、EPA介護福祉士の就労範囲に訪問系サービスを追加するに当たっては、人権擁護等の観点から、必要な措置を併せて講じることが必要になります。

この必要な措置の内容としては、以下のような様々な意見があったことから、引き続き、本検討会において議論を行うこととされました。

  • 一定の業務経験や日本語能力を有することを条件とする
  • 相談・通報窓口の設置等のほか、日本人介護福祉士の同行を義務付けるべき
  • 職員を訪問系サ ービスに従事させるかどうかは、介護事業者が利用者と職員の状況を踏まえて判断すべき
  • 実態をよく踏まえて検討する必要がある

 

(2)EPA介護福祉士の家族の資格外活動の緩和について

現在、EPA介護福祉士の家族の資格外活動においては、その就労先として介護関連施設は除外されています。

今後、法務省において、介護関連施設での就労の是非も含め、その在り方について、関係省庁と連携の上、検討が行われることとされています。

 

6 今後の対応について

本検討会では、経済連携協定に基づく介護福祉士候補者等の更なる活躍を促進するための具体的方策についての検討が進められ、その結果がとりまとめられました。

今後、関係省庁で、上記の考え方に基づき、制度の見直し等の取組が進められることになる予定です。