2019年4月より導入される新たな在留資格「特定技能」で、建設業で外国人労働者が働く事ができるようになります。
どのような要件を満たせば特定技能で日本に在留することができるのか、また特定技能の外国人を雇用する場合の注意点などをわかりやすくご説明したいと思います。
(特定技能に関しましては『在留資格「特定技能」とは』で詳しくご説明していますので、ご参照下さい。)
現行と新規の在留資格の比較
建設業では、2019年3月現在では、外国人建設就労者受入事業の「特定活動」という在留資格と技能実習生の「技能実習」という在留資格があります。
2019年4月からは「特定技能」という在留資格が新しく新設されます。
「特定技能」「技能実習」「特定活動」の関係は以下のようになります。
特定技能1号の条件
特定技能の資格を取得するためには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
建設分野の第2号技能実習を修了すること
技能実習を修了していることで、特定技能の在留資格を取得することができるようになります。
(技能実習制度の詳細に関しましては『外国人技能実習制度とは』をご参照下さい。)
「技能実習」から「特定技能1号」への移行
「特定技能」の創設から5年間に受け入れる建設業外国人労働者のうち90~95%が「技能実習」からの移行者と試算されています。
「特定技能評価試験」に合格すること
「建設分野特定技能1号評価試験(仮称)」又は「技能検定3級」に合格することで特定技能の在留資格の申請ができます。
(特定技能評価試験の詳細に関しましては『特定技能評価試験とは』をご参照下さい。)
特定技能1号の技能水準と日本語能力水準
特定技能1号の技能水準と日本語水準やその評価方法、国内試験の受験対象者などは以下のように規定されています。
特定技能1号の技能水準及び評価方法
「建設分野特定技能1号評価試験(仮称)」又は「技能検定3級」は、図面を読み取り、指導者の指示・監督を受けながら、適切かつ安全に作業を行うための技能や安全に対する理解力等を有する者であることを認定するものであり、この試験の合格者は、一定の専門性・技能を用いて即戦力として稼働するために必要な知識や経験を有するものと認められます。
建設分野特定技能1号評価試験(仮称)
建設分野特定技能1号評価試験については、試験の実施に当たり、試験問題の厳重な管理、当該試験内容に係る実務経験を有する試験監督員の配置、顔写真付きの公的な身分証明書による当日の本人確認や持ち物検査の実施等、替え玉受験等の不正受験を防止する措置を講じます。
- 試験言語:日本語
- 実施主体:国土交通省が試験機関として定める建設業者団体
- 実施方法:学科試験及び実技試験
- 実施回数:年1回から2回程度(国外での実施に加え、必要に応じて国内でも実施)
- 開始時期:平成31年度内予定
技能検定3級
技能検定3級については、各試験実施主体において講じられている顔写真付きの公的な身分証明書による当日の本人確認の実施等の措置に従います。
- 試験言語:日本語
- 実施主体:都道府県(一部事務は都道府県職業能力開発協会)
- 実施方法:学科試験及び実技試験
- 実施回数:各都道府県職業能力開発協会における試験の実施回数(国内)
国内試験の対象者
- 国内で試験を実施する場合、以下に該当する場合は受験資格が認められません。
- 退学・除籍処分となった留学生
- 失踪した技能実習生
- 在留資格「特定活動(難民認定申請)」により在留する者
- 在留資格「技能実習」による実習中の者
特定技能1号の日本語能力水準及び評価方法
日本語能力水準は「日本語能力判定テスト(仮称)」又は「日本語能力試験(N4以上)」に合格することとされています。
日本語能力判定テスト(仮称)
日本語能力判定テストに合格した者については、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有するものと認められることから、基本的な日本語能力水準を有するものと評価されます。
- 実施主体:独立行政法人国際交流基金
- 実施方法:コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式
- 実施回数:年おおむね6回程度、国外実施を予定
- 開始時期:平成31年秋以降に活用予定
日本語能力試験(N4以上)
当該試験に合格した者については、「基本的な日本語を理解することができる」と認定された者であることから、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有するものと認められ、本制度での受入れに必要となる基本的な日本語能力水準を有するものと評価されます。
- 実施主体:独立行政法人国際交流基金及び日本国際教育支援協会
- 実施方法:マークシート方式
- 実施回数:国内外で実施。国外では80か国・地域・239都市で年おおむね1回から2回実施(平成29年度)
「建設分野の特性を踏まえて国土交通大臣が定める基準への適合」とは
建設分野では、業種横断の基準に加え、建設分野の特性を踏まえて国土交通大臣が定める特定技能所属機関(受入企業)の基準が設定されています。
建設分野の受入企業は、1号特定技能外国人の入国に先立ち、受入計画を作成し、国土交通大臣による審査・認定を受けることを求められます。
受入計画の認定基準
- 受入企業は建設業法第3条の許可を受けていること
- 受入企業及び1号特定技能外国人の建設キャリアアップシステムへの登録
- 元請団体、専門工事業団体により構成される、特定技能外国人の適正・円滑な受入れを実現するための取組を実施する
- 特定技能外国人受入事業実施法人への加入及び当該法人が策定する行動規範の遵守
- 特定技能外国人の報酬額が同等の技能を有する日本人と同等額以上、安定的な賃金支払い、技能習熟に応じた昇給
- 賃金等の契約上の重要事項の書面での事前説明(外国人が十分に理解できる言語)
- 国又は適正就労監理機関による受入計画の適正な履行に係る巡回指導の受入れ 等
『建設特定技能受入計画の認定』を参照下さい。
特定技能2号の技能水準
特定技能2号の技能水準は、「建設分野特定技能2号評価試験(仮称)」又は「技能検定1級」の合格及び建設現場において複数の建設技能者を指導しながら作業に従事し、工程を管理する者(以下「班長」という。)としての実務経験(必要な年数については、試験区分ごとに国土交通省が別途定める。)を要件とします。
当該試験は、上級の技能労働者が通常有すべき技能を有する者であることを認定するものです。
班長としての実務経験を確認することで、その者が建設現場において複数の技能者を指導しながら作業に従事し、工程を管理する能力も有すると認められます。
これらの要件を満たす者は、法第2条の3第1項に規定する特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針(以下「基本方針」という。)に定める熟練した技能を有するものと認められます。
建設分野特定技能2号評価試験(仮称)
建設分野特定技能2号評価試験(仮称)については、試験の実施に当たり、試験問題の厳重な管理、当該試験内容に係る実務経験を有する試験監督員の配置、顔写真付きの公的な身分証明書による当日の本人確認や持ち物検査の実施等、替え玉受験等の不正受験を防止する措置を講じます。
- 試験言語:日本語
- 実施主体:国土交通省が試験機関として定める建設業者団体
- 実施方法:学科試験及び実技試験
- 実施回数:年1回から2回程度(国内)
- 開始時期:平成33年度予定
技能検定1級
技能検定1級については、各試験実施主体において講じられている顔写真付きの公的な身分証明書による当日の本人確認の実施等の措置に従います。
- 試験言語:日本語
- 実施主体:都道府県(一部事務は都道府県職業能力開発協会)
- 実施方法:学科試験及び実技試験
- 実施回数:各都道府県職業能力開発協会における試験の実施回数(国内)
特定技能外国人が従事する業務
建設分野において受け入れる1号特定技能外国人が従事する業務は、試験合格又は技能実習2号移行対象職種・作業修了により確認された技能を要する業務になります。
2号特定技能外国人が従事する業務は、試験合格及び実務経験により確認された技能を要する業務になります。
これらの業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務(例:作業準備、運搬、片付けのような試験等によって専門性を確認されない業務)に付随的に従事することは差し支えありません。
なお、建設分野の対象は、日本標準産業分類「D 建設業」に該当する事業者が行う業務とします。
従事する業務と技能実習2号移行対象職種との関連性
建設分野において受け入れる1号特定技能外国人が、必要な技能水準・日本語能力水準を満たしているものとして取り扱う場合における業務内容と技能実習2号移行対象職種において修得する技能との具体的な関連性については、下の別表のとおりとします。
当該職種に係る第2号技能実習を修了した者については、当該技能実習で修得した技能が、1号特定技能外国人が従事する業務で要する技能と、技能の根幹となる部分に関連性が認められることから、業務で必要とされる一定の専門性・技能を有し、即戦力となるに足りる相当程度の知識又は経験を有するものと評価し、試験を免除します。
建設業者団体及び元請企業に対して特に課す条件
① 建設業は多数の専門職種に分かれており、建設業者団体も多数に分かれていること等から、特定技能外国人の受入れに係る建設業者団体は、建設分野における外国人の適正かつ円滑な受入れを実現するため、共同して以下の取組を実施する団体(特定技能外国人受入事業実施法人)を設けること。
- 建設分野における特定技能外国人の適正かつ円滑な受入れの実現に向けた共同ルールの策定及び遵守状況の確認
- 建設分野特定技能1号評価試験(仮称)(以下「試験」という。)の実施に係る建設業者団体間の調整
- 海外の現地機関との調整、試験場所の確保、受験者の募集、試験の実施等
- 試験合格者及び試験免除者の就職先の斡旋・転職支援等
② 建設現場では、元請企業が現場管理の責任を負うことから、特定技能所属機関が下請企業である場合、元請企業は、特定技能所属機関が受け入れている特定技能外国人の在留・就労の資格及び従事の状況(就労場所、従事させる業務の内容、従事させる期間)について確認すること。
特定技能所属機関に対して特に課す条件
建設業では、従事することとなる工事によって建設技能者の就労場所が変わるため現場ごとの就労管理が必要となることや、季節や工事受注状況による仕事の繁閑で報酬が変動するという実態もあり、特に外国人に対しては適正な就労環境確保への配慮が必要であることから、以下のとおりとする。
① 特定技能所属機関は、建設業法(昭和 24 年法律第 100 号)第3条の許可を受けていること。
② 特定技能所属機関は、国内人材確保の取組を行っていること。
③ 特定技能所属機関は、1号特定技能外国人に対し、同等の技能を有する日本人が従事する場合と同等以上の報酬額を安定的に支払い、技能習熟に応じて昇給を行う契約を締結していること。
④ 特定技能所属機関は、1号特定技能外国人に対し、雇用契約を締結するまでの間に、当該契約に係る重要事項について、母国語で書面を交付して説明すること。
⑤ 特定技能所属機関は、当該機関及び受け入れる特定技能外国人を建設キャリアアップシステムに登録すること。
⑥ 特定技能所属機関は、特定技能外国人受入事業実施法人に所属すること。
⑦ 特定技能1号の在留資格で受け入れる外国人の数と特定活動の在留資格で受け入れる外国人(外国人建設就労者)の数の合計が、特定技能所属機関の常勤の職員(外国人技能実習生、外国人建設就労者、1号特定技能外国人を除く。)の総数を超えないこと。
⑧ 特定技能所属機関は、国土交通省の定めるところに従い、1号特定技能外国人に対する報酬予定額、安全及び技能の習得計画等を明記した「建設特定技能受入計画」の認定を受けること。
⑨ 特定技能所属機関は、国土交通省又は国土交通省が委託する機関により、⑧において認定を受けた計画を適正に履行していることの確認を受けること。
⑩ ⑨のほか、特定技能所属機関は、国土交通省が行う調査又は指導に対し、必要な協力を行うこと。
⑪ そのほか、建設分野での特定技能外国人の適正かつ円滑な受入れに必要な事項
建設キャリアアップシステムとは
建設業に従事する技能者は、他の産業従事者と異なり、様々な事業者の現場で経験を積んでいくため以下のような環境にあります。
- 個々の技能者の能力が統一的に評価されにくい
- 現場管理や後進の指導など、一定の経験を積んだ技能者が果たしている役割や能力が処遇に反映されにくい
技能者の現場における就業履歴や保有資格などを業界統一のルールでシステムに蓄積することによって、技能者の処遇の改善や技能の研鑽を図ることを目指す「建設キャリアアップシステム」の構築が進められています。
特定技能の外国人労働者にもこの「建設キャリアアップシステム」が義務つけられる予定です。
カードには住所や社会保険の加入状況、在留資格などの個人情報を登録されるため、有効なカードを持っていない不法就労者や失踪者は現場に入れなくなります。
建設キャリアアップシステムを外国人労働者にも適用することで、違法な就労を防ぐ効果も期待されています。
建築キャリアアップシステムの利用に当たり、技能者は、本人情報(住所、氏名等)、社会保険加入状況、建退共手帳の有無、保有資格、研修受講履歴などを登録します。
事業者は、商号、所在地、建設業許可情報を登録します。
登録により、技能者には、ICカード(キャリアアップカード)が配布されます。
現場を開設した元請事業者は、現場情報(現場名、工事内容等)をシステムに登録し、技能者は現場入場の際、現場に設置されたカードリーダー等でキャリアアップカードを読み取ることで、「誰が」「いつ」「どの現場で」「どのような作業に」従事したのかといった個々の技能者の就業履歴がシステムに蓄積される仕組みとなっています。
建設業の特定技能外国人に関するお問い合わせ
2019年4月以降に制度が決まり次第、お問い合わせ窓口を設置予定です。
窓口設置までのあいだは、新しい情報が入り次第、随時こちらのページで情報を更新いたします。