「『外国人技能実習生度』という言葉は聞いた事があるけれど、どんな制度なのか詳しくはわからない」という方も多いのではないでしょうか。
平成29年11月1日に施行された「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」に基づいた新しい技能実習制度に関してわかりやすくご説明したいと思います。
外国人技能実習制度とは
技能実習制度は『我が国で開発され培われた技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、その開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的とする制度』と定義されています。
つまり、開発途上国等の人に日本の技術や知識を習得して母国に帰ってから役立ててもらう趣旨の制度です。
ですから「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」と明記されています。
これは日本の人手不足を補うために単純労働をする労働力として技能実習制度を利用してはいけないという意味です。
外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律
第三条
技能実習は、技能等の適正な修得、習熟又は熟達のために整備され、かつ、技能実習生が技能実習に専念できるようにその保護を図る体制が確立された環境で行われなければならない。2 技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない。
受け入れ方式
外国人技能実習生を受け入れるには「企業単独型」と「団体監理型」の2種類あります。
それでは、それぞれどのような特徴があるのかをみてみましょう。
団体管理型とは
「団体監理型」は、事業協同組合等の中小企業団体、商工会議所、商工会等が受入れ団体となって研修生・実習生を受入れ、傘下の中小企業で実務研修及び技能実習を実施するものです。
実習生の受入方式としては96.6%が団体管理型になっています。(平成29年末時点)
また、団体管理型で受け入れている企業の内、65%が19人以下の零細企業となっています。
企業単独型とは
「企業単独型」とは、日本の企業が海外の現地法人や合弁企業、取引先企業の常勤職員を直接受け入れるものです。
主に大企業で外国人技能実習生を受け入れる場合に企業単独型での受け入れ方式をとります。
企業単独型で受け入れる外国人技能実習生の要件は以下の通りです。
- 送出し国の現地法人・合弁企業の常勤職員
- 引き続き1年以上又は過去1年間に10億円以上の取引実績のある取引先の常勤職員
- 送出し国の公務員等
在留資格「技能実習」
いずれの型についても、入国後1年目の技能等を修得する活動と、2・3年目の修得した技能等に習熟するための活動とに分けられています。
技能実習1号
技能実習の1年目は「技能実習1号」となり、企業単独型の1年目は「技能実習1号イ」、団体監理型の1年目は「技能実習1号ロ」となります。
技能実習の1年目の最初の原則2ヵ月は座学で講習を受けます。
この講習期間は受入企業と技能実習生の間に雇用関係はありません。
技能実習2号
2・3年目は「技能実習2号」となり、企業単独型の2・3年目は「技能実習2号イ」、団体監理型の2・3年目は「技能実習2号ロ」となります。
第1号技能実習から第2号技能実習へ移行するためには、技能実習生本人が所定の技能評価試験(学科と実技)に合格していることが必要です。
技能実習3号
4・5年目は「技能実習3号」となり、企業単独型の4・5年目を「技能実習3号イ」、管理団体型の4・5年目を「技能実習3号ロ」となります。
第2号技能実習から第3号技能実習へそれぞれ移行するためには、技能実習生本人が所定の技能評価試験(実技)に合格していることが必要です。
また、第2号技能実習から第3号技能実習に移行が可能な職種・作業(移行対象職種・作業)は主務省令で定められています。
第3号技能実習を実施できるのは、後述します「優良な監理団体・実習実施者」に限られます。
技能実習の職種と作業範囲
技能実習生を受け入れることが出来る職種と、技能実習生がおこなうことができる作業範囲は以下の通りです。
- 農業関係(2職種6作業)
- 漁業関係(2職種9作業)
- 建設関係(22職種33作業)
- 食品製造関係(9職種14作業)
- 繊維・衣服関係(13職種22作業)
- 機械・金属関係(15職種27作業)
- その他(12職種24作業)
技能実習法とは
2017年11月1日に「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」が施行されました。
この技能実習法は、それまで入管法令によって在留資格「技能実習」に係る要件等とされていた種々の規定を取りまとめ、さらに制度の抜本的な見直しを行って、新たに技能実習制度の基本法として制定されたものです。
外国人技能実習機構とは
技能実習法に基づき外国人技能実習機構が設立されました。
外国人技能実習機構では、主に以下のような業務を行います。
- 技能実習計画の認定
- 実習実施者の届出の受理
- 監理団体の許可申請の受理
- 実習実施者や監理団体に対する指導監督(実地検査・報告徴収)
- 技能実習生からの申告・相談に対応
外国人技能実習機構は、東京に本部事務所が置かれるほか、全国で13箇所(札幌、仙台、水戸、東京※、長野、富山、名古屋、大阪、広島、高松、松山、福岡、熊本)の地方事務所・支所において業務を行います。
※ 東京には、本部事務所とは別に、地方事務所も開設
技能実習計画とは
技能実習を行わせようとする者(実習実施者)は、技能実習計画を作成します。
その技能実習計画が適当である旨の認定を外国人技能実習機構から受けなければいけません。
この認定申請は、外国人技能実習機構の地方事務所・支所の認定課に行います。
技能実習計画に記載しなければならない事項や申請の際の添付書類が、技能実習法及びその関連法令で規定されています。
技能実習計画は、技能実習生ごとに、第1号、第2号及び第3号の区分を設けて認定を受けることとされています。
特に第3号技能実習計画に関しては、実習実施者が、「技能等の修得等をさせる能力につき高い水準を満たすものとして主務省令で定める基準に適合していること」(法第9条第10号)が認定の基準となります。
認定を受けた場合であっても、認定の基準を満たさなくなった場合や認定計画のとおりに技能実習が行われていない場合等には実習認定が取り消される場合があります。
常に法令等の基準を満たして技能実習を適正に行わせる必要があります。
実習実施者とは
実習実施者が技能実習を開始したときには、遅滞なく届け出なければなりません。
この届出は、外国人技能実習機構の地方事務所・支所の認定課に行います。
優良な実習実施者とは
以下の要件で得点が満点の6割以上であれば、優良な実習実施者の基準に適合します。
① 技能等の修得等に係る実績(70点)
過去3年間の基礎級、3級、2級程度の技能検定等の合格率* 等
*3級2級程度については、新制度への移行期は合格実績を勘案
② 技能実習を行わせる体制(10点)
・直近過去3年以内の技能実習指導員、生活指導員の講習受講歴(平成31年4月1日以降、加点対象)
③ 技能実習生の待遇(10点)
・第1号実習生の賃金と最低賃金の比較
・技能実習の各段階の賃金の昇給率
④ 法令違反・問題の発生状況(5点(違反等あれば大幅減点))
・直近過去3年以内の改善命令の実績、失踪の割合
・直近過去3年以内に実習実施者に責めのある失踪の有無
⑤ 相談・支援体制(15点)
・母国語で相談できる相談員の確保
・他の機関で実習継続が困難となった実習生の受入実績 等
⑥ 地域社会との共生(10点)
・実習生に対する日本語学習の支援
・地域社会との交流を行う機会・日本文化を学ぶ機会の提供
監理団体とは
監理事業を行おうとする者は、主務大臣の許可を受けなければなりません。
監理団体として満たさなければならない要件は、技能実習法及びその関連法令で規定されています。
監理団体の許可には、一般監理事業の許可と特定監理事業の許可の2区分があります。
一般監理事業の許可を受ければ第1号から第3号までの全ての段階の技能実習に係る監理事業を行うことができます。
特定監理事業の許可を受ければ第1号技能実習及び第2号技能実習に係る監理事業を行うことができます。
この許可申請は、機構の本部事務所の審査課に行います。最終的な許否の判断は主務大臣が行います。
許可を受けた場合であっても、許可の基準を満たさなくなった場合には監理事業の全部又は一部の停止や監理事業の許可の取消しが行われる場合があります。
常に法令等の基準を満たして監理事業を適正に行う必要があります。
優良な管理団体(一般管理事業)とは
以下の要件で得点が満点の6割以上であれば、優良な監理団体の基準に適合します。
① 実習の実施状況の監査その他の業務を行う体制(50点)
・監理事業に関与する常勤の役職員と実習監理を行う実習実施者の比率
・監理責任者以外の監査に関与する職員の講習受講歴 等
② 技能等の修得等に係る実績(40点)
・過去3年間の基礎級、3級、2級程度の技能検定等の合格率* 等
*3級2級については、新制度への移行期は合格実績を勘案
③ 法令違反・問題の発生状況(5点(違反等あれば大幅減点))
・直近過去3年以内の改善命令の実績、失踪の割合
④ 相談・支援体制(15点)
・他の機関で実習が困難となった実習生の受入に協力する旨の登録を行っていること
・他の機関で実習継続が困難となった実習生の受入実績 等
⑤ 地域社会との共生(10点)
・実習実施者に対する日本語学習への支援
・実習実施者が行う地域社会との交流を行う機会・日本文化を学ぶ機会の提供への支援
優良な監理団体等に対する拡充策のポイント
①優良な監理団体等への実習期間の延長
・3年間 ⇒ 5年間(一旦帰国後,最大2年間の実習)
②優良な監理団体等における受入れ人数枠の拡大
・常勤従業員数に応じた人数枠を倍増(最大5%まで ⇒ 最大10%まで等)
③対象職種の拡大
・地域限定の職種
・企業独自の職種(社内検定の活用)
・複数職種の実習の措置
技能実習生の保護
技能実習法では、第四十六条から第五十三条に技能実習生の保護に関する規定を定めています。
技能実習の強制の禁止
技能実習法第四十六条では技能実習の強制の禁止が規定されています。
これに違反した場合には、罰則(1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金)の対象となります(技能実習法 第108条)。
第四十六条 実習監理を行う者(第四十八条第一項において「実習監理者」という。)又はその役員若しくは職員(次条において「実習監理者等」という。)は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、技能実習生の意思に反して技能実習を強制してはならない。
違約金設定の禁止
技能実習生との間で違約金等の契約がされることは、業務従事の強制等によって技能実習生の自由意思に反した人権侵害行為を引き起こすおそれがあります。
そこで、技能実習法第四十七条では、「技能実習に係る契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と規定されています。
これに違反した場合には、罰則(6月以下の懲役又は30万円以下の罰金)の対象となります(技能実習法 第111条第4号)。
第四十七条 実習監理者等は、技能実習生等(技能実習生又は技能実習生になろうとする者をいう。以下この条において同じ。)又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他技能実習生等と社会生活において密接な関係を有する者との間で、技能実習に係る契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
2 実習監理者等は、技能実習生等に技能実習に係る契約に付随して貯蓄の契約をさせ、又は技能実習生等との間で貯蓄金を管理する契約をしてはならない。
パスポート・在留カードの保管の禁止
技能実習生のパスポートや在留カードの保管や外出等の私生活の自由の制限は、技能実習生の国内における移動を制約することになります。
このため、技能実習法第四十八条では技能実習関係者が技能実習生のパスポートや在留カードを保管することを禁止しています。
これに違反して、技能実習生のパスポートや在留カードを保管した場合には、罰則(6月以下の懲役又は30万円以下の罰金)の対象となります(法第111条第5号)。
また、「技能実習生の外出その他の私生活の自由」を不当に制限することも禁止しています。
これに違反して、技能実習生に対し、解雇その他の労働関係上の不利益又は制裁金の徴収その他の財産上の不利益を示して、技能実習が行われる時間以外における他の者との通信若しくは面談又は外出の全部又は一部を禁止する旨を告知した場合には、罰則(6月以下の懲役又は30万円以下の罰金)の対象となります(法第111条第6号)。
第四十八条 技能実習を行わせる者若しくは実習監理者又はこれらの役員若しくは職員(次項において「技能実習関係者」という。)は、技能実習生の旅券(入管法第二条第五号に規定する旅券をいう。第百十一条第五号において同じ。)又は在留カード(入管法第十九条の三に規定する在留カードをいう。同号において同じ。)を保管してはならない。
2 技能実習関係者は、技能実習生の外出その他の私生活の自由を不当に制限してはならない。
主務大臣に対する申告
技能実習生本人が実習実施者、監理団体等の不法行為を申告することができれば、迅速かつ的確に不法行為を是正することが可能となり、技能実習生の保護が図られることとなります。
このため、技能実習法第四十九条では、「実習実施者若しくは監理団体又はこれらの役職員が技能実習法令の規定に違反する事実がある場合においては、技能実習生は、その事実を主務大臣に申告することができる」と規定されています。
実習実施者や監理団体などの不正行為の申告は、外国人技能実習機構のホームページから行うこともできます。
申告の制度については、入国時に技能実習生に配付する技能実習生手帳に記載することとされています。
実習実施者若しくは監理団体又はこれらの役職員が、技能実習生が申告をしたことを理由として技能実習の中止その他不利益な取扱いをすることは禁止されています。
これに違反した場合には、罰則(6月以下の懲役又は30万円以下の罰金)の対象となります(法第111条第7号)。
二国間取決めに基づく送出国による送出機関の認定
外国に事業所がある送出機関の適否は、日本では確認することが難しいという問題があります。
そこで、日本政府と送出国政府との間で二国間取決めを作成し、各送出国政府に自国の送出機関の適格性を個別に審査してもらい、適正と判断された送出機関のみが認定されることになっています。
- ミャンマーとの協力覚書 【厚生労働省】【2018.04.19】
- スリランカとの協力覚書 【厚生労働省】【2018.02.01】
- バングラデシュとの協力覚書 【厚生労働省】【2018.01.29】
- モンゴルとの協力覚書 【厚生労働省】【2017.12.21】
- ラオスとの協力覚書 【厚生労働省】【2017.12.9】
- フィリピンとの協力覚書 【厚生労働省】【2017.11.21】
- インドとの協力覚書 【厚生労働省】【2017.10.17】
- カンボジアとの協力覚書 【厚生労働省】【2017.07.11】
- ベトナムとの協力覚書 【厚生労働省】【2017.06.06】
二国間取決めは、逐次各国と締結されていく予定です。直近の状況については、厚生労働省のホームページ(技能実習に関する二国間取決め(協力覚書))をご参照下さい。
送出機関の定義
監理団体に対して求職の申込みを取り次ぐか否かで、「外国の送出機関」と「外国の準備機関」の2つに分けられています。
それでは「外国の送出機関」と「外国の準備機関」とは、それぞれどのようなものなのかを見てみましょう。
外国の送出機関とは
「外国の送出機関」とは、外国の技能実習生が国籍又は住所を有する国又は地域の所属機関や団体監理型技能実習生になろうとする者からの団体監理型技能実習に係る求職の申込みを本邦の監理団体に取り次ぐ者をいいます。
外国の送出機関のうち、認定申請を行おうとする技能実習計画に係る技能実習生の求職の申込みを実際に監理団体に取り次ぐ送出機関を「取次送出機関」といいます。
認定された送出機関名については、外国人技能実習機構のHP(外国政府認定送出機関一覧)に国ごとに掲載することとしています。
外国の準備機関とは
「外国の準備機関」とは、技能実習生になろうとする者の外国における準備に関与する外国の機関をいいます。
例えば、外国で技能実習生になろうとする者が所属していた会社や、技能実習生になろうとする者を広く対象とするような日本語学校を経営する法人、旅券や査証の取得代行手続を行う者などが含まれます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
技能実習制度とは、どのようなものなのかがおわかり頂けたのではないかと思います。
技能実習法では、法令違反をした場合の罰則の規定もありますので、知らないうちに違法行為をしてしまうようなことがないように、しっかりルールを覚えておきましょう。