従来、法務省から高度人材と認定された方は「特定活動」という在留資格が付与されていました。
この「特定活動」の在留資格は、他の在留資格に該当しない場合に法務大臣が個々の外国人に活動を指定していた在留資格ですが、高度人材以外の方にも付与されている在留資格です。
しかし、日本が高度人材の積極的な受入れを図っていることを明確にして、高度人材の受入れをさらに促進するため、高度人材の方のみに付与される新しい在留資格「高度専門職1号」と「高度専門職2号」が平成27年4月1日に創設されました。
この高度専門職には「経営管理」に関する項目もあります。
高度専門職の経営管理に関する部分を中心に、高度人材とその条件であるポイント制に関して、判りやすくご説明します。
高度人材ポイント制とは
高度人材ポイント制とは、高度人材外国人の活動内容を「高度学術研究活動」「高度専門・技術活動」「高度経営・管理活動」の3つに分類して、それぞれの特性に応じて「学歴」「職歴」「年収」などの項目ごとにポイントを設けた制度です。
ポイントの合計が一定点数(70点)に達した場合、高度人材として認定され、出入国管理上の優遇措置を与えられます。
高度専門職のメリット
高度専門職には1号と2号があります。
それぞれのメリットを以下にご紹介します。
「高度専門職1号」の場合
高度専門職1号には、以下のようなメリットがあります。
- 複合的な在留活動の許容
- 在留期間「5年」の付与
- 在留歴に係る永住許可要件の緩和
- 配偶者の就労
- 一定の条件の下での親の帯同
- 一定の条件の下での家事使用人の帯同
- 入国・在留手続の優先処理
「高度専門職2号」の場合
高度専門職2号は、以下のメリットがあります。
- 「高度専門職1号」の活動と併せてほぼ全ての就労資格の活動を行うことができる
- 在留期間が無期限となる
- 在留歴に係る永住許可要件の緩和
- 配偶者の就労
- 一定の条件の下での親の帯同
- 一定の条件の下での家事使用人の帯同
- 入国・在留手続の優先処理
高度人材外国人とは
高度人材ポイント制に該当する外国人とは、どういった人達なのでしょうか。
平成21年5月29日高度人材受入推進会議報告書で、以下のように定義付けられています。
「国内の資本・労働とは補完関係にあり,代替することが出来ない良質な人材」であり,「我が国の産業にイノベーションをもたらすとともに,日本人との切磋琢磨を通じて専門的・技術的な労働市場の発展を促し,我が国労働市場の効率性を高めることが期待される人材」とされています。
ちょっと判り難いですね。
要は、「優遇してでも日本に来てもらいたいすごく優秀な人」です。
具体的には3つの種類の活動を行う人達になります。
それでは、その3つの種類の活動をみてみましょう。
高度学術研究活動「高度専門職1号(イ)」
入国管理局のホームページでは「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う研究,研究の指導又は教育をする活動」と定義されています。
要するに、研究所の研究者や研究の指導、教育などを行う教授(先生)のような方々です。
高度人材として認定されている数は、次にご紹介する高度専門・技術活動「高度専門職1号(ロ)」に次いで多くなっています。
高度専門・技術活動「高度専門職1号(ロ)」
入国管理局のホームページでは「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う自然科学又は人文科学の分野に属する知識又は技術を要する業務に従事する活動」と定義されています。
自然科学とは、生物学や化学、物理学のような自然界の現象に関する研究分野を指します。
人文科学とは、哲学、心理学、歴史学、社会学のような人間に関する研究分野を指します。
こういった分野の知識や技術が必要とされる仕事に従事するのが、高度専門・技術活動になります。
高度人材として認定されている数は、3つの活動の中で最も多くなっています。
高度経営・管理活動「高度専門職1号(ハ)」
入国管理局のホームページでは「本邦の公私の機関において事業の経営を行い又は管理に従事する活動」と定義されています。
このホームページで高度人材ポイント制についての情報を探されている人のほとんどが、この「高度経営・管理活動」に関しての情報を探されているのではないでしょうか。
通常の経営管理ビザとどこが違うのかなど、後でご説明します。
高度人材として認定されている数は、3つの活動の中で最も多くなっています。
とりあえず、ここではこの高度人材には、この3種類の活動をする人が該当するという点を知っておいて下さい。
会社経営で高度人材と認定される条件
高度専門職となる条件をみる前に、どれくらいの人数が経営管理で高度人材として認定されているのかを見てみましょう。
この法務省の資料をみると、経営管理で高度人材を認定されている人がほとんどいないことが判ります。
通常の経営管理ビザには学歴要件や職歴要件などはありませんが、経営管理で高度人材として認定されるには、以下の条件で70ポイント以上獲得する必要があります。
(経営管理ビザに関しましては『経営管理ビザとは』で詳しくご説明していますので、ご参照下さい)
それでは、具体的にどのようにポイントが加算されるのかを見てみましょう。
学歴条件
学歴は大卒以上でポイントが加算されます。
後で特別加算のところで出てきますが、日本の大学を卒業している場合は、さらにポイントが追加されます。
学歴 | ポイント |
博士、修士または専門職学位を有している | 20ポイント |
経営管理に関する専門職学位(MBA・MOT)がある | 25ポイント |
大学を卒業またはこれと同等以上の教育 | 10ポイント |
職歴条件
職歴は3年以上の実務経験があればポイントが加算されます。
職歴 | ポイント |
10年以上の実務経験 | 25ポイント |
7年以上~10年未満の実務経験 | 20ポイント |
5年以上~7年未満の実務経験 | 15ポイント |
3年以上~5年未満の実務経験 | 10ポイント |
年収条件
年収は1000万円以上でポイントが加算されます。
ここで注意しなければいけない点があります。
年収には最低条件として300万円以上という条件が付けられています。
つまり年収300万円未満の場合、他の条件で70ポイント以上獲得しても、高度人材として認定されませんのでご注意下さい。
年収 | ポイント |
3000万円以上 | 50ポイント |
2500万円以上~3000万円未満 | 40ポイント |
2000万円以上~2500万円未満 | 30ポイント |
1500万円以上~2000万円未満 | 20ポイント |
1000万円以上~1500万円未満 | 10ポイント |
地位条件
経営管理ビザで申請される場合、ほとんどが取締役以上の役職になられると思いますので、この条件は比較的ポイントが稼ぎやすい項目と言えます。
地位 | ポイント |
代表取締役・代表執行役・代表権を有する業務執行社員 | 10ポイント |
取締役・執行役・業務執行社員 | 5ポイント |
特別加算条件
上記の条件以外に、個別の条件をクリアすることでポイントが加算されます。
特別加算 | ポイント |
所属会社がイノベーション創出促進支援措置を受けている (中小企業の場合) |
20ポイント |
所属会社がイノベーション創出促進支援措置を受けている (中小企業以外の場合) |
10ポイント |
試験研究費・開発費の合計額が売上高の3%超 (中小企業の場合) |
5ポイント |
従事しようとする業務に関して外国の資格・表彰等があり 法務大臣が認めたもの |
5ポイント |
日本の大学・大学院を卒業したもの | 10ポイント |
日本語能力試験N1合格相当または日本語を専攻して 外国の大学を卒業したこと |
15ポイント |
まとめ
いかがでしたでしょうか。
経営管理での高度人材の認定は条件が厳しいと感じられた方も多いかもしれません。
高度人材に認定された場合、一定条件での親の帯同や家事使用人の帯同など、他の在留資格では認められない特別な優遇もあります。
もし高度人材に認定される可能性がありそうな場合は、是非ご確認されることをお勧めします。