ホテル・旅館業の外国人雇用・採用のポイントと注意点を徹底解説します!

現在は全国のホテルや旅館で約3万8千人の外国人労働者が働き、そのうち7割が留学生のアルバイトと言われています。

ホテルの通訳やフロントとして外国人を雇う場合、「技術・人文知識・国際業務」という在留資格が必要になりますが、この在留資格ではレストランの配膳や部屋の掃除などの単純作業をすることはできません。

2030年の訪日客目標は6千万人に設定され、観光庁は、それまでに現在の2倍超になる約8万5千人の外国人スタッフが必要になると見込んでいます。

当然「技術・人文知識・国際業務」の外国人や外国人留学生のアルバイトだけで、この需要を満たすことはできませんので、新たに「特定技能」という在留資格を創設し、ホテルや旅館業で働く外国人を受け入れることが検討されています。

ホテルや旅館業で必要な在留資格に関して判りやすくご説明したいと思います。

 

ホテル・旅館の「特定技能」

ホテル・旅館の「特定技能」2019年4月に新設される在留資格「特定技能」とは、宿泊業など限定された業種に限り外国人の単純労働の就労を認めるものです。

全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会では、これに伴ってベトナム人を積極的に採用するプロジェクトを推進しています。

2018年7月にハノイ大学と連携のための覚書を調印し、今後はホーチミン市国家大学人文社会大学、ダナン外国語大学、フエ外国語大学、貿易大学との協定も予定されています。

現在、ホテルで約1万3千人、旅館で約2万5千人が働いていると推定されています。

2030年までにはホテルで約2万1千人、旅館は約6万4千人の計8万5千人が必要になると推測されています。

清掃やレストランの接客、荷物運びなどの単純労働が認められる在留資格が新設されることで、宿泊業界の外国人雇用が一気に進むものと思われます。

ホテルや宿泊の特定技能外国人に関しましては『【特定技能】宿泊業(ホテル・旅館)の外国人雇用』で詳しくご説明しておりますので、ご参照下さい。

(「特定技能」に関しましては『特定技能とは』のページで詳しくご説明しておりますので、ご参照下さい)

 

現在のホテル・旅館業で働く外国人に必要な在留資格

ホテル・旅館に必要な在留資格現時点でホテルや旅館で働いている外国人は主に「技術・人文知識・国際業務」という在留資格と「資格外活動」という在留資格となります。

外国人は日本に滞在中には、原則として許可された活動以外はおこなうことは出来ません。

例えば留学生は「留学」という在留資格のため、フルタイムで働くことはできません。(詳しくは『在留資格とは』をご参照下さい)

ただ、「資格外活動」という許可をとることで、週28時間以内のアルバイトをすることができるようになります。

まずは「技術・人文知識・国際業務」に関して見てみましょう。

 

ホテル・旅館の「技術・人文知識・国際業務」とは

日本若しくは外国の大学又は日本の専門学校を卒業した外国人がホテル・旅館等の宿泊施設における業務に従事する場合、「技術・人文知識・国際業務」という在留資格の申請をおこないます。

「技術・人文知識」に該当する業務は「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学,工学その他の自然科学の分野若しくは法律学,経済学,社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務」と定義されています。

ホテルや旅館の場合、宿泊プランの企画立案、インバウンドマーケティング、外国人の人事管理などが該当します。

「国際業務」は「外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務」とされています。

ホテルや旅館の場合、通訳・翻訳業務、外国語でのフロント業務などが該当します。

レストランでの接客のような単純労働は「技術・人文知識・国際業務」には該当しません。

 

ホテル・旅館の「技術・人文知識・国際業務」の判断基準

ホテル・旅館の「技術・人文知識・国際業務」の判断基準「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当するものであるかは在留期間中の活動を全体として捉えて判断されます。

例えば、新入社員研修で2ヶ月間レストランの接客を学び、研修終了後はレストランで働くことはなく、フロント業務やマーケティング業務に携わる場合は許容される可能性があります。

また、業務に従事する中で一時的に「技術・人文知識・国際業務」に該当しない業務を行わざるを得ない場面も想定されます。

例えば、フロント業務に従事している最中に団体客のチェックインがあり,急遽,宿泊客の荷物を部屋まで運搬することになった場合などがあります。

こうした場合に当該業務を行ったとしても入管法上直ちに問題とされるものではありません。

しかし、こうした単純労働が主たる活動になっていることが判明したような場合には、「技術・人文知識・国際業務」に該当する活動を行っていないとして、在留資格の更新ができない場合もありますので注意が必要です。

 

「技術・人文知識・国際業務」の要件

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は外国人であれば誰でも取得できるものではありません。

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の取得に必要な要件をみてみましょう。

 

学歴・実務経験

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得するためには、以下のような定められた学歴又は一定の実務経験が必要になります。

  • 当該技術若しくは知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し,又はこれと同等以上の教育を受けたこと。
  • 当該技術又は知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了したこと。
  • 10年以上の実務経験を有すること。

「当該技術若しくは知識に関連する科目」という点が非常に重要になります。

大学や専門学校で専攻した内容と業務内容が関連していない場合は許可が出ない場合があります。

 

報酬

日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けることが条件になります。

外国人だからという理由だけで、同じ仕事をしている日本人よりも報酬を低く設定されていると許可が出ない可能性があります。

 

ホテル・旅館で雇用できる「技術・人文知識・国際業務」の業務

ホテルや旅館で「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に外国人を雇う場合、どんな職務内容でも雇用できるというわけではありません。

レストランの配膳やベッドメイキングなど部屋の掃除などの単純労働をさせることはできません。

それでは、どのような職務内容であれば雇用できるのかをみてみましょう。

 

フロント業務

外国人の対応としてのフロント業務をおこなうことは可能です。

ただし、雇用するホテルが「外国人の対応が必要」ということが大前提となります。

例えば、ほとんど外国人宿泊客がいないホテルの場合は、外国人対応の重要性が低いと判断される可能性があります。

対応しなければいけない外国人宿泊客の母国語を雇用する外国人が話せないような場合は雇うことが難しくなります。

例えば、外国人宿泊客のほとんどが欧米系であるのに、英語が全く話せない中国人をフロント業務として採用するという場合は、許可が出ない可能性があります。

 

経理・総務・営業

大学や専門学校での専攻科目が会計や総務、マーケティングなどの営業に関連する場合は「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の許可が出る可能性があります。

専攻科目の関連性は大きな許可基準のひとつですので、調理学校を卒業して料理の専門士になった外国人が、経理部で働くことで「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得することはできません。

 

ホテル・旅館の「技術・人文知識・国際業務」の許可例と不許可例

ホテルや旅館で「技術・人文知識・国際業務」を申請した場合の具体的な許可と不許可の例をみてみましょう。

 

許可事例

在留資格の許可事例① 本国において大学の観光学科を卒業した者が,外国人観光客が多く利用する本邦のホテルとの契約に基づき,月額約22万円の報酬を受けて,外国語を用いたフロント業務,外国人観光客担当としてのホテル内の施設案内業務等に従事するもの

② 本国において大学を卒業した者が,本国からの観光客が多く利用する本邦の旅館との契約に基づき,月額約20万円の報酬を受けて,集客拡大のための本国旅行会社との交渉に当たっての通訳・翻訳業務,従業員に対する外国語指導の業務等に従事するもの

③ 本邦において経済学を専攻して大学を卒業した者が,本邦の空港に隣接するホテルとの契約に基づき,月額約25万円の報酬を受けて,集客拡大のためのマーケティングリサーチ,外国人観光客向けの宣伝媒体(ホームページなど)作成などの広報業務等に従事するもの

④ 本邦において経営学を専攻して大学を卒業した者が,外国人観光客が多く利用する本邦のホテルとの契約に基づき総合職(幹部候補生)として採用された後,2か月間の座学を中心とした研修及び4か月間のフロントやレストランでの接客研修を経て,月額約30万円の報酬を受けて,外国語を用いたフロント業務,外国人観光客からの要望対応,宿泊プランの企画立案業務等に従事するもの

⑤ 本邦の専門学校において日本語の翻訳・通訳コースを専攻して卒業し,専門士の称号を付与された者が,外国人観光客が多く利用する本邦の旅館において月額約20万円の報酬を受けて,フロントでの外国語を用いた案内,外国語版ホームペ-ジの作成,館内案内の多言語表示への対応のための翻訳等の業務等に従事するもの

⑥ 本邦の専門学校においてホテルサービスやビジネス実務を専攻し,専門士の称号を付与された者が,宿泊客の多くを外国人が占めているホテルにおいて,修得した知識を活かしてのフロント業務や,宿泊プランの企画立案等の業務に従事するもの

⑦ 海外のホテル・レストランにおいてマネジメント業務に10年間従事していた者が,国際的に知名度の高い本邦のホテルとの契約に基づき,月額60万円の報酬を受けてレストランのコンセプトデザイン,宣伝・広報に係る業務に従事するもの

 

不許可事例

在留資格の不許可事例不許可の事例では「主な業務が単純労働」「専攻した学問と業務の関連性がない」「日本人と同額以上の報酬でない」「雇用の必要性」などの理由で不許可となる場合が多いと言えます。

① 本国で経済学を専攻して大学を卒業した者が,本邦のホテルに採用されるとして申請があったが,従事する予定の業務に係る詳細な資料の提出を求めたところ,主たる業務が宿泊客の荷物の運搬及び客室の清掃業務であり,「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事するものとは認められず不許可となったもの

→不許可理由:「主な業務が単純労働」

 

② 本国で日本語学を専攻して大学を卒業した者が,本邦の旅館において,外国人宿泊客の通訳業務を行うとして申請があったが,当該旅館の外国人宿泊客の大半が使用する言語は申請人の母国語と異なっており,申請人が母国語を用いて行う業務に十分な業務量があるとは認められないことから不許可となったもの

→不許可理由:「雇用の必要性」

 

③ 本邦で商学を専攻して大学を卒業した者が,新規に設立された本邦のホテルに採用されるとして申請があったが, 従事しようとする業務の内容が,駐車誘導,レストランにおける料理の配膳・片付けであったことから,「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事するものとは認められず不許可となったもの

→不許可理由:「主な業務が単純労働」

 

④ 本邦で法学を専攻して大学を卒業した者が,本邦の旅館との契約に基づき月額約15万円の報酬を受けて,フロントでの外国語を用いた予約対応や外国人宿泊客の館内案内等の業務を行うとして申請があったが,申請人と同時期に採用され,同種の業務を行う日本人従業員の報酬が月額約20万円であることが判明し,額が異なることについて合理的な理由も認められなかったことから,報酬について日本人が従事する場合と同等額以上と認められず不許可となったもの

→不許可理由:「日本人と同額以上の報酬でない」

 

⑤ 本邦の専門学校において服飾デザイン学科を卒業し,専門士の称号を付与された者が,本邦の旅館との契約に基づき,フロントでの受付業務を行うとして申請があったが,専門学校における専攻科目と従事しようとする業務との間に関連性が認められないことから不許可となったもの

→不許可理由:「専攻した学問と業務の関連性がない」

 

⑥ 本邦の専門学校においてホテルサービスやビジネス実務等を専攻し,専門士の称号を付与された者が,本邦のホテルとの契約に基づき,フロント業務を行うとして申請があったが,提出された資料から採用後最初の2年間は実務研修として専らレストランでの配膳や客室の清掃に従事する予定であることが判明したところ,これらの「技術・人文知識・国際業務」の在留資格には該当しない業務が在留期間の大半を占めることとなるため不許可となったもの

→不許可理由:「主な業務が単純労働」

 

レストランの配膳や掃除スタッフを雇いたい場合

食事後のテーブル片付け、使用された食器類の洗浄、ブッフェラインの用意、片付け等や客室清掃、ベッドメイキングなどの業務は「技術・人文知識・国際業務」の在留資格ではおこなうことができません。

このような「単純労働」とみなされる作業は以下の在留資格であればおこなうことができます。

 

身分系ビザ

身分系のビザという在留資格はないのですが、「日本人の配偶者等」「永住者」「永住者の配偶者等」「定住者」という在留資格を総称して「身分系ビザ」という言い方をします。

身分系ビザを持っている外国人は日本人と同じように職務内容の制限がなく自由に働くことができます。

ですからレストランの配膳やベッドメイキングなどもおこなうことができます。

身分系ビザは以下の通りです。

  • 「日本人の配偶者等」:日本人の配偶者・子・特別養子
  • 「永住者」:法務大臣から永住の許可を受けた者(入管特例法の「特別永住者」を除く。)
  • 「永住者の配偶者等」:永住者・特別永住者の配偶者及び本邦で出生し引き続き在留している子
  • 「定住者」:第三国定住難民,日系3世,中国残留邦人等

 

資格外活動

出入国管理及び難民認定法(入国管理法)では、以下のように、「活動の遂行を阻害しない範囲内」という条件付きで「相当と認められた場合」には、在留資格で認められた活動以外の活動を許可するとされています。

出入国管理及び難民認定法(活動の範囲)
第一九条 第二項
法務大臣は、別表第一の上欄の在留資格をもつて在留する者から、法務省令で定める手続により、当該在留資格に応じ同表の下欄に掲げる活動の遂行を阻害しない範囲内で当該活動に属しない収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行うことを希望する旨の申請があつた場合において、相当と認めるときは、これを許可することができる。この場合において、法務大臣は、当該許可に必要な条件を付することができる。

判りやすく言いますと、例えば留学生の場合、学業に差し障りが出ない範囲でアルバイトを認めますということです。

この資格外活動で働けるのは主に「留学ビザ」の留学生と「家族滞在ビザ」の外国人家族です。

資格外活動は週28時間以内の労働に限るなどの条件がありますので注意が必要です。

「資格外活動」に関しましては『資格外活動とは』で詳しくご説明していますのでご参照下さい。

 

まとめ

まとめいかがでしたでしょうか。

ホテルや旅館ではレストランの配膳や掃除などの業務では「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取れないということがご理解いただけたかと思います。

しかし、冒頭でご説明しましたように増え続ける外国人観光客に対応するためには、日本人や外国人留学生のアルバイトだけでは足りない状況になっています。

そこで「特定技能」という在留資格の創設が検討されています。

 

 

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